べんやみんみんみん
最近ベンヤミンをずっと読んでますが、この人はやはり魅力的ですな。
Illuminations: Essays and Reflections
- 作者: Walter Benjamin
- 出版社/メーカー: Schocken
- 発売日: 1969/01/13
- メディア: ペーパーバック
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この間は、翻訳論である"The Task of the Translator(翻訳者の使命)"を読みました。合わせて、授業で配布された補足テクストとして、この論考に対するポール・ド=マンによる考察と、あと自分で前々から興味がありながら積ん読状態だった、酒井直樹による翻訳論も読んでみました。三人とも共通して、誰に向けて書いているのかということに極めて意識的であるように思われ、そしてそれは一つの言語に閉じられた共同体に向けられているのではなく、むしろ言葉が届かないかもしれない相手としての、すべての人に開かれているように感じました。
ベンヤミンのテクストは、一回サラっと読むとお手軽に知識が得られるというようなものではなくて、言い換えると、その中のデータや情報に価値があるわけではないと思います。そうではなくて、時間をかけてゆっくり言葉を噛み砕いていき、彼が何を言わんとしているかに接近しようとしていくと、自分の言葉への感度が磨かれて、あるときふっと新しい問いが立つような、そういうものだと思います。
安っぽい言い方をすると、研究をやっていこうと思ったら、沢山本を読んでソフト面を充実させていくということはもちろん必要だし重要なのだけれど、どこかでハード自体をバージョンアップさせることも不可欠でしょう。ベンヤミンのテクストは、真剣に読めば真剣に読んだだけ視界が広がり読みが深まるような、そういう奥行きを持っていると思います。彼のファンは多いけれど、多くの人は、ふとベンヤミンがすぐ身近にいるような気になる、そういう瞬間を求めて読むのではないかしらなどと感じました。