感謝祭

23日はアメリカの祝日Thanksgiving Dayでした。毎年11月の第四木曜日がこの日にあたります。僕は、スポンサークラブのメンバーのMaryという方がご自宅のホームパーティーにお招きしてくれたので、初のThanksgiving partyを体験することができました。

 

しかし、のっけからドタバタとした展開。先方と連絡がうまく取れていなくて、その日は一日予定が空いているとこちらから伝えたままやり取りが途絶えており、とはいえディナーパーティーだというのでまあ早くても夕方からだろうとたかをくくり、昼夜逆転生活のまま当日朝8時くらいまで勉強してそれから床についたのですが、これが大失敗でした。昼一時半くらいに枕元の携帯が鳴る音で目が覚め、ギョッとしながら「まさか…」と恐る恐る電話を取ったら、なんともうアパートの前まで迎えに来ているとのこと。大慌てで三階から下まで降りて、正直に事情を話し、あと20分で準備するから勘弁してと伝え、大急ぎでスーツに着替えました。「コンディションの悪い寝ざめランキング」があれば相当いいセンにいくのではないでしょうか。

 

お迎えに来てくれたご婦人は面白がって笑いながら迎えてくれたのですが、てっきりMary本人に違いあるまいと思っていた彼女は、そのご友人のJannetでした。簡単に自己紹介をしながら車を運転することおよそ20分、Maryのご自宅に到着。正直言うと一度クラブの例会で全員に自己紹介したことが一度あっただけで、顔と名前が一致していなかったので失礼があったらやばいなあとか思っていたのですが、とても気さくな初老の女性で、暖かく迎えてくれました。気合入れて無駄にスーツなんて着てきてしまったけれど、仲のいい友人同士で気さくにやりましょうという会だったので、これなら自分ももっとリラックスした服装で来ればよかったと思いました。

 

参加者はMaryとKeithご夫妻、息子さんのSamご夫婦と生後数カ月の赤ちゃん、Jannet、それにお友達が7~8人でした。ホストのお二人が料理の仕上げにかかっている間僕らゲストはしばし談話、料理が揃ったところで、みんなで手をつないで輪になり、ホストからのお言葉とアーメンをいただき、食事になりました。この食事も、一つのテーブルをみんなで囲む感じだったらもっと緊張したと思うのですが、セルフサービスで好きなだけ取って、空いている椅子に座って食べるという形式だったので、とてもリラックスできました。感謝祭での欠かせない食べ物である七面鳥とかぼちゃパイの他にも、たくさんの料理が置いてあって、どれもおいしく、初めてきちんとした「アメリカ料理」を食べたという気がしました。帰り際にはタッパーにたくさんお土産を詰めてくれたので、帰ってからももう一度おいしくいただきました。

 

庭付きの白い家は内装もとても瀟洒な印象だったので、とても洗練されている感じがしますとか言ったら、飾ってあるいくつかの工芸品はMaryが自分で作っているのだそうです。さらに、絵本を作ったりもしているのだそうな。お連れ合いのKeithは料理の他にもピアノも趣味だそうで、グランドピアノが置いてありました。(ちらっと見たら、Steinway & Sons.の刻印があって、軽く衝撃でした。民家に置いてあるのは初めて見たかも。)なんか全体的に、アメリカのUpper Middle Classの生活を目の当たりにしたという気がしました。家族という単位を少しも照れずにとても大切にするところも含めて。

 

とはいえ、いまだに下手くそな英語で初対面の人たちと会話をするのはやはりいささか緊張もあるのですが、そこでさりげなく気を使ってくれたのが、行きと帰りに車を出してくれたJannet, (あだ名はJane)でした。1937年生まれだからすでに御年75歳のはずなのだけれど、「気持ちはまだ20代なのよ」と語る彼女は実にパワフルで若くて、しかも話がうまくて面白かったです。いろんな話の引き出しがあって、うまく茶々を入れてくれたり、いじってくれたりして、何度も腹を抱えて笑いました。実は何十年か昔にSUNY Albanyの英文科で修士号を取ったそうで、僕の大先輩にもあたるJaneは、アカデミックな話にも政治・時事問題にも広く通じていて、すごいバイタリティを感じさせました。教会で英語を外国出身者に教えることにも関わっているのだそうで、ノンネイティブとの接し方を熟知しているというのか、少し敷衍すると「もてなし慣れている」という余裕を感じさせました。こっちに来てから、ホスピタリティの豊かさに感銘をうけることがときどきあるけれど、彼女も間違いなくそうした精神の持ち主だと思いました。ああいう年の取り方をしたい。

 

翌日の金曜日は、通称"Black Friday"といって、各種小売店が商品を大安売りする日です。たくさんの人が明け方前からこぞってショッピングモールなどに集結して長蛇の列を作るのだそうですが、僕は参加を控えておきました。安くなったとはいえ、お金がないし、最低限の生活必需品はやっとそろったので。あと、人ごみが厭。Black Fridayが終わると、これからいよいよ冬本番用のコートが安く売られたりするらしいので、そこで本気コートを買えたらいいかな、と思っています。

 

ともあれそんなわけで、初めてのThanksgiving体験は、暖かいおもてなしとおいしいご飯をいただくことができ、とても思い出に残る日になりました。感謝祭、他の人たちはどんな過ごし方をしたんだろうか。